「ロッキー」に感動する

 私は、若いころ読んだり観たりした小説や映画を、あとになって改めて評価するということはまずないのだが、「ロッキー」を35年ぶりに観たら感動して不覚にも泣いてしまった。

 貧困地区に住むロッキーの鬱屈を隠して生きる姿、夜にジョークを考えてペット屋に行きエイドリアンに話しかけるさま、借金のとりたてを請け負っているやくざへの腰の低さ、エイドリアンの兄の粗暴さ、トレーナーの元ボクサーがマネジャーにしてくれと懇願に来たのをさんざん罵ったあとで追いかけるロッキーと、下町の貧民街の人情が胸にしみたのである。まあ、20歳ころの東大生には分からなかったのも無理はない。

 あとはこの前年に作られた「さらば愛しき女よ」にスタローンが端役で出ているのを知ったのもある。スタローンが自分で脚本を書き、アメリカン・ドリームを実現したのだというのがそれで何か胸にしみた。