栗原康の伊藤野枝の本が売れているらしい。私は伊藤野枝が好きなので、野枝の伝記が広く読まれるのは歓迎である。まあ破天荒な文章だが、著者は経済的基盤はよくなさそうなので売れてよいことだ。しかし岩波でよく「白痴」を認めたものだ。シナはダメだが白痴はいいのか。
 だが木村荘太については言っておきたい。栗原は、木村が友人らと、あの女を落とせるか賭けをしたなどと書いているが、それはありえんだろう。だって友人らと話したなら、野枝に辻潤がいることくらい分かってしまう。『魔の宴』を読んだって「牽引」を読んだって、荘太は野枝の文章を読んで感激して会いに行ったらけっこう美人だったので本気で惚れたのである。どこから出た話か知らないが、ちゃんと『魔の宴』と「牽引」(http://homepage2.nifty.com/akoyano/documents/kenin.pdf これは私のウェブサイトにある)を読んだのか。