一か月ほど前に届いたシンポジウム記録『ポストモダンを超えて』のあとがきで、編者の三浦雅士は、チョムスキーについて、ヒト誕生から十万年で言語の獲得などという進化論的突然変異が起こるのはおかしいと書いていて、むしろマイケル・トマセロらの仮説のほうが説得的だと書いていたのだが、先日の「毎日新聞」の、チョムスキーへのインタビューの書評では、ほぼチョムスキーに軍配をあげた形で、六万年前の突然変異を紹介している。
しかし突然変異は、集団に起こるものではなく個体に起こるものだから、チョムスキーは同書で、その個体の子孫が言語を獲得し、出アフリカを起こしたのだと言う。すると、突然変異を起こさなかったほかの人類は、要するに滅びてしまった、ということでいいのだろうか。