『黄金の日日』の竹下景子再登場の回(31回「龍虎相撃つ」)を観た。昔観た記憶では、幸四郎の助左と桔梗の竹下が双方からだだだだっと駆けて行って抱き合うのだが、これは記憶違いであった。
第一回で、堺の町を信長に包囲され、今井宗久(丹波哲郎)が信長軍へ侵入して直談判し、堺を救うのだが、その際ついていくのが、助左、石川五右衛門(根津甚八)、杉谷善住坊(川谷拓三)の三人で、歴史上の人物や伝説的人物をうまく配した、市川森一らしいロマンティックな冒頭部分である。宗久らは、竹下景子が演じる、もと今井家の下女だったしまの屋敷で休息するのだが、しまが幼い赤子を抱いてあやしているのを宗久は発見する。それが、桔梗(竹下二役)で、宗久の子だったという、いやーロマンティックだ。
それから16年後、小牧・長久手の戦いを目前にした堺で、桔梗は鉄砲の名手として助左の前に現れ、投げたからわけを鉄砲で撃つ勝負で、助左に勝つ。だが助左は、この美しい娘が誰だか気づかない。そのあとで、三メートルくらいの距離で向かい合って、加賀の国から来た、鉄砲は杉谷善住坊に教わったと言い、助左が気付いて、桔梗が助左に駆け寄るシーンの間に、幼い桔梗に声をかける助左のシーンがカットバックで入るのである。
そうか、16歳だったのか、と、まあ竹下景子は当時24歳で、大人顔なのでそうは見えないのだが、はて。
はじめに赤子として登場するのは、信長が上洛した1568年、善住坊が信長を狙撃してのこぎり引きの刑で死ぬのが1573年で、桔梗は五歳か六歳にしかなっていない。それで、善住坊に教わったから鉄砲の名手になった、というのは無理があるだろう。
なお『黄金の日日』には、晩年の先代幸四郎(白鸚)もゲスト出演し、助左の父ではないかと匂わせるのだが、この先代幸四郎は、ドラマなどではかなりセリフが下手だった。