枡野さんのエッセイが載っている『児童心理』11月号「運動の苦手な子」特集がやっと図書館から回ってきた。巻頭には早乙女勝元の、戦争時代の回想のエッセイがあり、真ん中へんに枡野さんのが載っている。
ところがこの雑誌の、この特集に関する文章は、この二人以外は全部ウソ。運動が生まれつき苦手な子供(人間)がいるということをかたくなに認めようとしない人ばかりである。苦手な種目があるならほかの種目もやってみようとか、苦手意識を克服しようとかそんなことばかり書いてあって、あきれかえった。教育学界は、子供には無限の可能性があるというイデオロギーに今なお毒されきっているのだな。こんな連中に指導された体育教師に指導される子供たちは、本当にかわいそうだ。
(小谷野敦)