ディケンズの面白くない作品について

 私はディケンズの『荒涼館』を傑作だと言っているのだが、世間で今も、日本でも読まれているらしい『二都物語』と『大いなる遺産』が私は苦手で、どこがいいのか分からないのである。長いのが多いので読んでないのも多いのだが、『オリヴァー・トウィスト』だけは、高校生の頃読んで面白かった。通俗だが。
 『デイヴィッド・コパフィールド』も高校生の時読んだが、さほど面白くなかった。これは理由は割とはっきりしていて、ホモソーシャルなのが嫌なのである。『二都物語』は、はじまりがやたら長くて退屈なのだが、後半に至っても別に面白くないというか、荒唐無稽に過ぎる。酒びたりの弁護士というのも、私は酒を呑まないのでまったく共感できないし、身代わりに死ぬというのも気持ち悪い。
 『大いなる遺産』は、なんでほかの人が面白がるのか、まったく謎である。誰か身近に、面白いという人がいたらとっくり話を聞こうと思うのだが、未だかつて出会ったことがない。
 で、「読書メーター」で感想を見てみたが、まず、人生訓みたいのがいいという人がいて、これは論外である。小説は人生訓のために読むものじゃないし。次に、登場人物が魅力的だという人がいる。さあ、私はこれが分からんのである。『デヴィッド・コパフィールド』にミコーバーというのが出てきて、ダメ人間なのだが気のいい男であるらしいが、そういう人間に私は魅力を感じない。子母澤寛勝海舟ならすごく好きなんだが。あとまあ決定的にいかんのは、主人公が男だということで、『オリヴァー・トウィスト』も男ではあるのだが、『荒涼館』も、主人公が女なのが成功の要因であろう。つまり私は「男と男の絆」みたいなのが嫌いなのである。