橘木俊詔って人は、学者じゃなくて大学ステマ請負人としか思えない。『東京大学 エリート養成機関の盛衰』は結局東大のステマだし、『学歴入門』は国際教養大のステマ。中身のなさには驚かされる。

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井上靖は美術にも詳しいということで、戦後出た美術全集の監修とか結構やっているのだが、戦後の日本の知識人というのは、作家でも美術に詳しいという人が多く、たいていは美術エッセイを書いた。文学者の美術好きというのは『白樺』あたりから、久米正雄とかもそうなのだが、ほかにも芳賀徹先生とか、西洋美術好きが戦後世代には多い。堀田善衛なんか『ゴヤ』四部作を書くし、中野孝次は『ブリューゲルへの旅』だし、大江健三郎はブレイクの絵、川端はもう文学より美術のほうが好きなんじゃないかというくらい。村上龍美大出身だし、大岡信橋本治は自分で美術評論を書く。
 それに対して、戦後の作家で、演劇に関心がない人は多く、特に歌舞伎の場合、純文学方面は三島由紀夫くらい、音楽もジャズが多くて、クラシックは村上春樹にいたるまで、なぜかいないのである。私が美術がどうも嫌なのは、この「戦後日本的美術帝国主義」みたいなのを感じるせいなのだ。