私が高校生の時、東大卒で、珍しく生徒から信頼されていた倫理の教師が、左翼だったのだが、ある時戦争礼賛詩を読み上げると、「これを書いたのは誰だと思いますか。三好達治です」と力強く言った。
それは要するに、三好達治のような偉い詩人まで、こんな詩を書いたのだという意味らしいと、みなが思っただろうが、中には三好達治の名を知らないのもいたろうし、知っていても、特段偉い詩人だという風に思っていなかったから、いくらか、白けた空気が流れた。だいたい、文学少年であった私も、詩には興味がなかったとはいえ、それほど三好達治が偉いとは思っていなくて、今も思っていない。
昔は偉いことになっていたのだろうか。