小津安二郎『早春』に里見とんの手が

 『表象』という、何だか今にも、ソーカルターゲッティングなことを言いだしそうな雑誌が送られてきて何ごとかと思ったら、宮本明子さんという早大院生の、小津安二郎『早春』はシナリオ段階で里見とんが手を入れていたという新事実を残された里見の書き込みのある台本から明らかにした論文が載っている。

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宇野浩二には『文学的散歩』という著書が二種類ある。大正期に新潮社から出したものと昭和期に改造社から出したものだが、内容は全然違う。しかも後者は日本図書センターから復刊されているという困ったちゃんである。内容が同じなのを全然違う題に変えてしまう例は通俗小説に多いが、こういうのは別の意味で困る。