風神の門

 私が高校三年の時、NHKの水曜時代劇で司馬遼太郎の『風神の門』をドラマ化したのだが、なんかこれは変なドラマだった。それでも、その前の、直木三十五の『南国太平記』を原作とした『風の隼人』なんか途中で観るのをやめたのに対して、最後まで観ていたのだが、だいたい「風」のついた題名を二作続けるというのがもうセンスを疑う。
 主演が三浦浩一霧隠才蔵で、ヒロインが小野みゆき、ライバルが磯部勉と、どうも配役がしょぼいし、猿飛佐助が渡辺篤史小野みゆきなんてどう見てもブスで、こんなヒロイン、信じられなかったし、三浦浩一はやたらと唾を飛ばしてまるで熱血青春ものだし(そういうコンセプトで作ったらしい)、磯部がまた二流感をふんぷんと漂わせていた。
 その主題歌がまたひどくて、当時人気のあったクリスタルキングなのだが、今ならありえないネーミングである。「時間差」とかいい、調べたら阿里そのみとかいうのが作詞しているがこの詞が意味不明。池辺晋一郎作曲となっているが、まあクリキンに合わせて作曲したのだろう。
 などと書こうとして調べたら、驚くべきことにDVDが出ていて、多分当時中学生くらいで観ていた人たちが絶賛している。
 その歌詞というのが、

限りない 夢を抱いたお前は大空へ飛んでゆけ
俺は今日から孤独な旅人 振り向く余裕もなくしたふりをする
同じ時代を過ごしていても 違う時間を掴んでいたのさ
見せかけの友情よりも 本当の別れを選んだ俺は
今 笑ってやろう

 というのだが、当時こういうのが流行っていたのだ。なんだよ「余裕もなくしたふりをする」って。ああ、嫌な時代。
そういえば、『なんとなく、クリスタル』はクリスタルキングが登場した後だな。

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水月昭道君は、2012年に団塊の世代の大量定年があるから、この機会を逃すと大学への就職はできないぞなどと書いているのだが、それは定年65で計算している? しかし彼らは私立へ再就職するし、定年になった人の代わりに50代の人をとるとか、水月君自身書いているように、後をとらずに削減してしまうこともあるから、むしろ70歳で私立も定年になる2016年以降を待たなければダメなのでは? まあその頃までには結構な数の大学が「倒産」しているだろうけれど。
 水月君はひとつ重要なことを書き落としている。博士号があるなら、海外に職を求めることができるということだ。特に日本文学など、日本を研究対象にしていれば、割と迎え入れられやすい。もちろん、英語などはみっちりやらなければならないが、国内で職があるのを待っているより、英語を学んで海外に職を求めるほうが早いかもしれない。どこで英語の勉強をしようかと思ったら、ぜひ猫猫塾へどうぞ。
 (小谷野敦