実は偉い川本三郎?

 『シナの五にんきょうだい』は、幼稚園の頃に読んだ記憶がある。もちろん、楽しい絵本だった。だが、石井桃子訳、福音館書店のそれは、ちょうど私が大学生の頃、絶版になっていた。もちろん、「シナ」のためである。それで私はカナダへ留学した際、原書を見つけたので、買ってきた。
 するとそれから三年ほどたって、瑞雲舎というところから復刊された。しかも題名はまったく同じ、訳者は川本三郎だった。恐らく福音館で『中国の五にんきょうだい』などとして再刊しなかったのは、この物語の内容が、それこそ
「探偵小説十則」の、「シナ人は魔法を使うから犯人にしてはいけない」のように、シナ人は魔法を使うという「偏見」を「強める」とでも考えたからだろう。そんな偏見は日本で持っている人はいないと思うのだが・・・。
 しかし、それを『中国の五にんきょうだい』にせず「シナ」のまま出した川本三郎は、存外硬骨漢なのではないか、とふと思った。どこかにこの問題について書いていないかと思ってググっていたら、Bk1のレビューに行き当たり、いきなり私の名前が出てきたので驚いた。加藤周一丸山眞男も「シナ」って書いているのにね。