ドリス・レッシングにノーベル文学賞

 一昨年ピンターが受賞して、レッシングは11歳年上。日本なら間一年で11歳年上の作家が受賞するなんて、ありえんよなあ。レッシングはアイリス・マードックと同年だから、生きていればマードックだろう。長生きは受賞の得。
 とはいえ、英国人受賞者はこれまで107年の歴史の中で僅か7人で、最近英国株が上がったらしい。グレアム・グリーンなんか遂にとれなかった。キプリングゴールズワージー、エリオット、チャーチルゴールディングジョイスモームもフォースターもとっていない。モームは、チャーチルが受賞したと聞いた時、「ウィンストンは文章も下手だし、何かの間違いだろう」と言ったそうで、伝えた人も気の毒に思ってそれ以上押しては言わなかったという。普通、何かの間違いだと思うよ。チャーチルはもちろん政治的理由での受賞、モームは、大衆作家と見なされて受賞しなかったのだろう。チャーチル53年からゴールディング83年まで、30年間英国の英語作家は受賞しなかった。(カネッティは英国に住んでいたがドイツ語作家)グリーンも、もしかしたらスパイ小説の大衆作家と見なされたのかもしれないし、やはり受賞しなかったイタリアのモラヴィアも、ちょっとそんな感じがする。ゴールディングがとったのは、人類史上最大の被害者ネアンデルタール人を描いたからで、この『後継者たち』はへんてこりんで面白いけれど。
 ゴールズワージーは、昔はよく読まれたものだが、『林檎の木』だけあった時代もあり、代表作『フォーサイト・サガ』なんか読む人はいまいないだろう。レッシングの代表作は何かなあ。私の学生時代は『草は歌っている』くらいしか邦訳はなかったが。新潮文庫で『破壊者ベンの誕生』を復刊するかな。