アマゾンレビューの問題点、およびクルマ

 アマゾンのレビューは悪名高い。最近、書き手が削除できるようになったりしたが、かつては著作権はアマゾンにあると言っており、利用規約には以下のように書いてある。

当サイトをアクセスされるお客様は、レビュー、コメント、その他のコンテンツの投稿、提案、アイデア、コメント、質問、その他の情報の送信を行うことができます。ただし、それらの内容が、法令に反するもの、猥褻なもの、脅迫的なもの、名誉を毀損するもの、プライバシーを侵害するもの、知的財産権を侵害するもの、第三者を誹謗中傷するもの、不快感を与えるもの、あるいは、ソフトウェアウイルス、政治的主張、商業目的の勧誘、チェーンレター、メールの大量送信を含むものは、この限りではありません。(略)Amazon.co.jp は、そのようなコンテンツを削除または編集する権利(義務ではない)を保有しますが、投稿されたコンテンツを常に監視しているわけではありません。

お客様がコンテンツの投稿または素材の送信を行った場合、お客様は、Amazon.co.jp とその提携会社に対して、そのようなコンテンツを使用、複製、変更、翻案、公開、翻訳、二次著作物の作成、配布、世界中のメディアに表示できる、非独占的な、無償の、永続的な、取り消し不可能な、完全なサブライセンスを含む権利を許諾したものとみなします。(略)お客様は、ご自分が投稿されたコンテンツに関するすべての権利を保有または管理すること、そのコンテンツが正確であること、提供したコンテンツの使用がこのポリシーに反しないものであり、いかなる他人または組織をも傷つけるものではないこと、提供したコンテンツに起因するすべての請求についてAmazon.co.jp またはその提携会社に補償することを表明し、保証するものとします。Amazon.co.jp は、いかなる行為またはコンテンツも監視し編集する権利を保有しますが、義務はありません。Amazon.co.jp は、お客様または第三者から投稿されたいかなるコンテンツに対しても、責任を負わず、義務が生じることもありません。

 「取り消し不可能な」と書いてあるのに取り消せるというのはおかしいだろう。こう言いつつ実際には誤読、誹謗中傷に近いレビューがわんさと載っていて、しかしアマゾンには責任はないと自ら表明している。もっとも「保証するものとします」の箇所をよく読めば、仮に裁判を起こしたら、そのレビューを投稿した者が補償の責任を負うということだ。
 しかし厄介なのは、名誉毀損に相当しなくても、著者に反論の場がないことである。「著者からのコメント」は投稿できるが、レビューそのものと同様、「他のレビューや当サイトの機能に関するコメントは、本の内容とは直接関係しませんので、お避けください」とある。だからそこで反論してはいけないということだ。じゃあどこで反論するんだ。私はここでやっているが、アマゾンを見た者が常にここに来るとは限らない。雑誌の場合も、次号に反論を載せても、前の批評自体が、図書館などへ行かなければ見られないから納得できるが、アマゾンの姿勢は、著者からの反論を封じようとするものでしかない。bk1の場合は、レビュー欄で反論することができたからいいが、アマゾンのこのやり方は不法行為ではないか。

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 ところで私が、路上喫煙がいけないならなぜクルマはいいのか、と言うのに対して、ほとんどの者が「排ガス」のことだと思うようだ。しかし私は、クルマを走らせることそれ自体を言っているのだ。『すばらしき愚民社会』でも『禁煙ファシズムと戦う』でも書いたのに、依然として誤解が去らないのは、それだけ多くの愚民が「クルマ社会」にどっぷり浸っているからである。              (小谷野敦