玉三郎×三浦雅士

1995年に、ETV特集坂東玉三郎が取り上げられ、間に玉三郎三浦雅士の対談があった。双方40代であった。私にはこの双方意気投合という風の対談が難解で分からず、当時佐伯順子さんに見てもらったら、佐伯さんは分かったらしい。今回DVDに焼いたので妻に見てもらったら、ものすごく面白いと言う。舞踊の話で、私は舞踊オンチなので分からないのである。私は人間の体が舞踊的に動くということへの感性が欠如しているのではなかろうか。

 今回、妻に説明してもらって分かったのは、これが舞踊家元制度への批判であるということであった。私は家元の芸というのを碌に見ていないから分からないが、家元の舞踊というのは普遍性がないものらしい。

 もう一つ、「鷺娘」で、色々な女の顔が凝縮されるというところ。これは大島真寿美「渦」にもそんなところがあったが、それでは男の顔というのはないのか、と私は思う。男というのは日本の古典藝能では、武人としてばかり表象される。女の顔というのはおおむね恋する女であるが、恋する男の表象というのが、舞踊では保名くらいしかない。こういう「恋する」といえば「女」になってしまうところが、私はやっぱり日本の古典藝能のあきたりないところであると思った。