どこが正論なんだ

 高月靖の新刊『ロリコン』はアマゾンで注文してほどなく届くが、駅前の書店で見つけたので立ち読みしたら、最後のほうで私の『もてない男』から上野千鶴子の「コミュニケーション・スキルを磨け」「マスターベーションしながら死んでいただければ」というのが引用されて、言い方に反感を覚える人もいるかもしれないが、正論だろうと書いてあって、注文したことを少し後悔した。
 その後に本田透の論が紹介され、ついで、なぜか加藤秀一の新書から「恋愛輸入品説」が紹介されていて、何しろ『南極1号伝説』は絶賛したことがあるから、高月という人はこの方面では素人なのだな、と思った。
 何しろつい先日、渋谷知美の新刊で、暗に上野の「もてない男の自己責任論」が論駁されているのを見て、おお渋谷よくぞやったと感涙にむせんだ後だけに、ああこれは、近い者ほど誤りに気づきやすいという学問上の法則に思い至った。
 しかし、それを差し引いても、あれを「正論」だと思うというのは、高月、実はもて男だなと邪推したりしたのであったが、もしや女か?
 アマゾンから届いてもブックオフへ直行する可能性がいま60%くらい。

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本の雑誌』は索引がなくなった? それにしても昭和文学の番付を見て、つくづくこの雑誌と私とが合っていないのが分かった。しかしふと、あの弁護士・木村晋介が延々と連載していることに気づいた。柳美里裁判で原告側弁護士をした人で、私は失望したものだが、もしかすると柳美里が『en-taxi』を抜けたのは坪内祐三が不快だったからではないか、と今ごろ気づく私はまたしても間抜け? 坪内と柳って全然接点ないものねぇ…でも坪内が同時代の作家と接点がないのは柳に限らないが…でも柳は「朝日新聞」には怒っていたし…。

 (小谷野敦