違うと言っているのに

 「ヘレン・ケラーの生涯を描いた「奇跡の人」の原作者が死去」。あれはヘレン・ケラーの生涯なんか描いていない。あれはサリヴァン先生が主役なのである。
 木村毅の『大衆文学十六講』には、第一次大戦後の超人気作家として、エドガー・ウォーレスとホール・ケインを挙げてある。しかしウォーレスは日本ではあまり人気がなく、ケインも『永遠の都』しか読まれていない。今でも潮文庫にある。戦後、三笠書房の社長の竹内道之助は、アーチーボルド・クローニンに傾倒してほぼ全作を訳し、全集まで出したが、いまクローニンを読む人などいまい。私も『城砦』だけは読んだが、常識的かつ道徳的な主人公の苦難と成長の物語で、まあ今では読むに耐えまい。
ところで木村著には「藝術が人生の模倣なのか。人生が藝術の模倣なのか」という「命題」とある。1933年にもう間違っているのだ。

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ハチミツとクローバー』の映画を前に観たのだが、確かに原作と違う。身長140cmくらいの設定の女の子が身長164の蒼井優じゃいかんだろう。ただわしが気にかかっているのは、年上美人という設定の西田尚美である。『白い巨塔』の時も美人には見えなかったのだが、あそこでは美人と言われれば美人に見える。

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 佐藤優の角川文庫の解説を坂東眞砂子が書いていた。これでは笙野と佐藤が仲良くなるのはありえまい・・・。