谷川建司という私と同年の映画研究者がいて、早稲田の客員教授などをしている。この人が「高麗屋三兄弟と映画」などを出して以来、歌舞伎に口を出すようになっているが、本来の専門ではないせいか、細かい間違いが多い。「レビュー大全」389pにレビューがあるが、「海老蔵になったら団十郎になるもの」とか、依然としてバワーズが戦後の歌舞伎を救ったとか怪しいことを書いている。
市川猿之助、ついに逮捕。梨園の“はぐれもの”として歩んできた、澤瀉屋133年のトラブル史(集英社オンライン) - Yahoo!ニュース
その谷川が猿之助について記事を書いているのだが、これがまた怪しい。「簡単に言えば澤瀉屋では、猿之助と段四郎の名跡を同格のものとして扱い、一代ごとに交互に襲名させてきたわけだ。」そんな事実はない。本来は段四郎のほうが格上だが、二代目が猿之助を格上にしてしまったのだ。谷川は、澤瀉屋の「家督」が一人だけいるみたいに思っているようだが、そういう事実はない。
「後ろ楯を失った三代目猿之助は、ある意味、梨園のつまはじき者として居場所がなくなり、「スーパー歌舞伎」という全く別物の見世物興行で生きていくしかなくなったわけだ。」
これも本当かどうか疑わしい。異端だったのは確かだとして、「スーパー歌舞伎」以前に宙乗りやけれん歌舞伎をやっていたわけで、そのために異端になったというのが正しいし、居場所がなかったかどうかも疑わしい。