織田作之助「わが町」感想

織田作之助「わが町」は1943年に書下ろし刊行された長編で、1956年に川島雄三監督、辰巳柳太郎主演、南田洋子の二役で映画化されたのを観たことがあるが記憶にない。1959年に森繁久彌の主演・演出で「佐渡島他吉の生涯」として劇化され、何度か再演された。

 大阪を舞台とし、明治から昭和までを生きた車引きの佐渡島他吉とその孫娘を描いた市井もので、オダサクにはこんな長編もあったのかと、『直木賞をとれなかった名作たち』に入れなかったのを済まなく思った。のちに山崎豊子が大阪ものを掲げて登場するが、オダサクはその先駆とも言うべく、大阪弁のセリフが達者で、全体に読みやすい。岩波文庫に『わが町・青春の逆説』として入ったのが2013年で、それまで埋もれていたのはなぜだろうと思ってしまう

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