学問的キャッチボール

 以前、佐々木邦の初期作品『いたずら小僧日記』について、当時池坊短大教授だった堀部功夫氏が、これの原本は『BAD BOY'S DIARY』として米国で出たものだとした(1991年)のを、その作者がメッタ・ヴィクトリア・フラー・ヴィクターだという論文を書いたのだが(2004年)、堀部氏が論文を集めた『近代文学と伝統文化 探書四十年』(和泉書院 2015)を見たら、同論文の「付記」に、私と石原剛が堀部氏の論文に触れて、さらに原作者がヴィクターだと指摘したとあり、「優れた研究者とのキャッチボールは私の夢想する学界ユートピアの実現で有頂天になる」とあった。
 その前に、鴻巣友季子の『明治大正翻訳ワンダーランド』(2005)と澤入要仁に黙殺される、とあるのだが、澤入氏のほうは、1995年の科研費論文で、
https://kaken.nii.ac.jp/en/grant/KAKENHI-PROJECT-07851067/
 当時はインターネットも普及していないし見落としたのだろうし、それどころか私が澤入氏のほうを知らずに無視してしまったことになる。この場を借りてお詫びする。ただし鴻巣のほうは2005年なので、あまり言い訳はできない。