これは前にどっかに書いた気がするんだが、阪大にいた96年ころ、やや年下の女性同僚の室にいたら、来客があった。ドアの前についたてがあるから、私の姿は見えないのだが、来たのは男子学生らしくて、彼女が出ていくと旧知の学生らしく、「あらいらっしゃい」の後、「今日は告白に来ました。先生が好きです。つきあってください」と言うので、私はうわっと驚き、中へ入ってきたらどうしようと、隠れ場所を探したりしたのだが、彼女もさすがに困り、「そんな…あなたはまだ若いんだし」などと言って、ようやく帰した。戻ってきて、はああー、十歳も違うのに、と言う。前から時々質問などに来ていた学生だという。
 しかし私は感動したのである。仮に私が二十歳の学生で、十歳上の教師を好きになったとして(ただし私のころはそんな女性教師はいなかった)、とてもこんな真似はできないと思った。偉いと思い、『七人の侍』の木村功のように、「あなたは素晴らしい人です」と言いたいほどであった。彼も今は38くらいになっているだろう。

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坂爪真吾という人の新書が送られてきた。編集者からである。新潟で童貞処女卒業合宿をやった人だが、東大の社会学で私の妻の先輩だった人である。妻が何か手伝いをすると「坂爪真吾一日使用券」というのをくれて、「性的奉仕も可能です」と書いてあったそうだ。「歌舞伎町の夜の女王」とかいう論文を三年生で発表したとか書いてあるが、これは上野千鶴子ゼミで発表しただけで、活字化はされていない。PDFにでもしてウェブサイトに上げればいいのに。もっともこれは歌舞伎町へ行ってヘルスだかソープだかに行って書いたものらしい。
 で、本のしおりの辺りをぱっと開いたら、夜這いシステム礼賛が書いてあって、これはいかんと思った。夜這いってそれは妊娠したらどうするんだ、ということは私は十年前から言っている。最後に載っている文献一覧を見たら、私の本はない。上野とか、澁谷知美の本とか、上野千鶴子お墨付きの本しか挙がっていない。これじゃあダメなのである。中を読み始めたら、先行研究を調べるのが重要だと上野ゼミで学んだなどと書いてあったが、「ただし小谷野敦のは見なくてよし」とでも学んだのであろうか。
 たとえば、「セックスをするのになぜ恋愛か売春しかないのか」などとある。そんなことはない、セフレというのがあるではないか。(書きかけ)