なぜロジャーにもっと訊かなかったのか

 アガサ・クリスティーの『なぜエヴァンズに頼まなかったのか』の1980年製作のドラマを当時NHKで放送したのを観たのを、30年ぶりに観た。面白かったのだが字幕に誤訳があったのはともかく、筋に疑問が生じた。これは始め写真のすり替えがあるのだが、半ばでロジャーという男が疑われて、直接彼に訊いてみる場面がある。ロジャーは、入っていた写真をとって破棄したことを認めるのだが、いつの間にか「すりかえた」が「とった」になっていて、すり替えについては質問しないのである。これは多分、クリスティーのごまかしではないかと思った。まあ長編推理というのは一か所くらいおかしなところがあるものだが、これはちょっとばれやすい。