洋泉社から出した新書版『私が愛した大河ドラマ』が絶版処分になった。宝泉薫という人の文章中に、鈴木嘉一『大河ドラマの50年』(中央公論新社)からの不適切引用があったからである。ただし、鈴木著は巻末に参考文献として挙がっている。引用はおおむね、橋田壽賀子の言葉である。中には、宝泉が意図的にか意味を違えたものもあって、『いのち』の時に、近代大河は打ち切りになるという前提で橋田がオリジナルを書いたが、「それほど当たらなくてもいいじゃない、と気が楽でしたね。だって、私の責任じゃないんですもん。私はいつも視聴率を気にしないで、その時書きたいものを書く」とあったのを宝泉は「それほど当たらなくてもいいじゃない…。だって、(打ち切りは)私のせいじゃないんですもん」としているが、近代路線の打ち切りの話ではないだろう、ここは。
 宝泉も不用意で、これだけ引用したら、私なら鈴木著の名を文中に出しておく。単にそれだけのことが、なんでできないのかと歯がゆくも思う。なお寄稿した私たちは、版元と編プロからの手紙が来ただけであるが、宝泉の弁明の類はまだ聞けておらず、それは何か共同執筆者に対して責任があるのじゃないかと思う。