サヨナラ、サヨナラ

 淀川長治の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」は、当初回数が決まっていなかったが、回数で賭けをする子供がいると聞いて三回に決めたというのは有名な話である。
 ところが高見順日記を読んでいたら、「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」というのは、『百万人の英会話』の五十嵐新次郎がやっていたもののようで、淀川のオリジナルではないらしい。そんな古い話ではないので知っている人もいるだろうから、教えてほしいものである。 

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綱淵謙錠『斬』が復刊した。首切り山田浅右衛門が明治を迎えた、そこを描いた名作である。直木賞受賞作とは思えない。ほかに、直木賞受賞作なのに名作といえば、早乙女貢『きょう人の檻』、原りょう『私が殺した少女』、佐藤雅美『恵比寿屋喜兵衛手控え』か。これに準ずるのが、古川薫『漂泊者のアリア』、中村正軌『元首の謀叛』、佐木隆三復讐するは我にあり』あたりであろうか。