白川静と高島俊男

高島俊男先生の新刊『お言葉ですが 漢字検定のアホらしさ』には、白川静藤堂明保の論争を扱った、『ユリイカ』に載った文章も入っている。ここで高島先生は、まあ中立的、といった論じ方をしているのに、あとがきでいきなり、白川の本はつまらん、と言い逃げしている。これは困るのである。そう言うならちゃんと論じてほしいのである。それから、井波先生との露伴「運命」論争もちゃんとやってほしいのである。

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山本芳明という人の論文を読んだのだが、どうもこの人は「通俗小説」を問題にしながら、実際の通俗小説として読むものといったら、『真珠夫人』とか、有名なものばかりなのだよね。それじゃダメだろうと思った。

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谷崎詳細年譜の、谷崎精二再婚を、昭和16年11月5日に訂正。青野季吉日記による。

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足
『新小説臨時増刊 文豪夏目漱石』は、漱石の弟子たちが相談して作ったものだが、編集担当は田中純か。芥川の「葬儀記」が載る予定だったが間に合わなかったようだ、とあるが、これは3月に出た第4次『新思潮』の最終号「漱石先生追慕号」に載っている。しかしそれは間に合わなかったのか、どうか。芥川など『新思潮』の連中は漱石山房の新参者だったから、年長の弟子たちからまだ早いと故障が出た可能性あり。なお『新思潮』のほうの漱石追慕号という題字は、当時十歳の長男純一(房之介さんのお父さん)が書いているが、これを書かせたことで某氏は年長の弟子たちから睨まれることになった。