ハナニムとハヌニム

 『比較文学研究』に載った鄭百秀の『コロニアリズムの超克』の三ツ野君による書評で、今では韓国でも自国のナショナリズムを批判してもいいのだ、とあったので、疑問を感じて李建志君に訊いてみたら、
「韓国では自民族中心主義は、いちおう「批判しなければならない」という合意に達しています。それが今世紀の韓国です。しかし、これが「ことばだけ」であるという状況が続いているのです。それは、保守派のナショナリズムこそが間違っていたのであり、革新派は正しいという主張です。」
 というようなことで、もっとあるのだが詳しいことは李『日韓ナショナリズムの解体』(筑摩書房)の第二章に書いてある。なお鄭が、韓国にキリスト教が根付いた理由を、「宇宙の本体」を意味する「ハナニム」という朝鮮語に「唯一神」が訳されたからだというのだが、どうもその言葉が、いつ誰によって作られたのか分からない。あと「ハヌニム」(ハヌル=天、ニム=さま)という言葉もあるそうだが、これも来歴が分からない。
 まあその当否は私には判断できないが、日本でゴッドを神と訳したのが大いなる混乱を招いたとかいうのはおかしいのであって、多神教の神だってゴッドだし、西洋人は日本人が天皇唯一神だと思っていると誤解したというのも、別に誤解ではなくて水戸学が現人神を作り出して、昭和十年以後はそういう教育をしてきた、というのだから。
 韓国でキリスト教が広まり日本では広まらなかったというのは、結局単に日本の仏教寺院の檀家制度と、徳川期の宗門人別帳制度のせいではないか。また日本には、けっこう潜在的キリスト教徒が多いのではなかろうか。

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