「文学の話をする」

カナダ留学中のことは「カナダ留学実記」に書いたが、アメリカ人教員のモストウとクレイマーは、激しく政治的な教員で、ひたすら日本のナショナリズム批判を繰り返して私と対立していったのだが、その初期のころ、鶴田欣也先生から「モストウと文学の話なんかはしないのかね」と言われて、ぎょっとしたことがある。「文学の話をする」というのが、いかにも大正時代の、ないし戦後の、非政治的な話のように言われたから、鶴田先生はモストウがどういう人だか知らないんだろうかと思ったほどであった。