「英語青年」廃刊

 110年の歴史を持つ『英語青年』が来月で廃刊になる。全国2万人の英語英文学者たちが、この雑誌に載ることを夢見てきた、そんな雑誌である。蟻二郎が、四方田犬彦が、それぞれに批判してきた雑誌である。自分の文章がこの雑誌に載っただけで、何冊も買って配るやつがいた雑誌である。さて、『國文學』と『解釈と鑑賞』はあとどれだけもつか−−。

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天地人』は、まだ面白くはならない。ただ上杉謙信が今回もかっこいい。柴田恭平の謙信はひどかったが。ところで第一回で「上杉家と長尾家の対立」とか言っているが、あれは変だろう。上杉家ったってあれも元は長尾家である、という説明がなかったような気がする。
 だが先行き心配なのは、あの景勝である。謙信に似ても似付かぬ愚将で、直江山城守がいたから家康相手の駆け引きができたようなもので、関ヶ原の時も大坂の陣の時も、景勝が直江山城を従えて家康に対抗していたら、天下はどうなったか分からない。まあそれを言えば黒田如水だってそうだが・・・。しかも悪人面の北村一輝では、直江山城ほどの者がなにゆえ従ったのか、次第に説得力を失っていくのではないか。
 第二回、実家へ逃げ帰った幼い山城を母が追い返すのは、『近江聖人』のパクリであろう。『近江聖人』すなわち中江藤樹の逸話で、昔の子供はみなこれを読まされたものだ。こないだ某大学で、徳川時代の学問について発表した学生が「藤・・・江・・・」とか言っているので「中江藤樹」と言ってやったが・・・。

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有島、里見兄弟の母有島幸子が、モーパッサンの「親殺し」を翻訳して三遊亭円朝に与え、それで「名人長二」ができた、という説がある。何でも、父武が横浜の税関長だった頃、フランス語を習っていて、部下から教えられてそれを母幸子が筆記したとかで、かな文字運動に熱心な夫婦だったから、かな文字で書いた翻訳の草稿と、円朝から武へのお礼の手紙があるらしい。それを生馬から聞いた馬場孤蝶が大正5年に書いたという。村松定孝「三遊亭円朝と有島幸子」(『ソフィア』1988)に載っている。しかし不思議なのは、少なくとも里見がこのことを一度も書いていないことと、幸子、というけれど幸子は筆記しただけではないのか、という疑問がある。

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確か昨日あたりの「毎日新聞」に、著作権延長についての意見二つが載っていたが、三田誠広の言うことは相変わらず変で、平均寿命が伸びた現在、五十年たったら配偶者が生きていることもありうる、もし暴力的な脚色などがされたら配偶者は傷つく、と言っている。五十年たってまだ配偶者が生きていて、しかもまだ読まれている作家って、どの程度いるというのだろう。しかもそういう批判は出ているのに、三田は答えない。相変わらずゆとり教育を擁護している寺脇研もそうだが、批判に答えないような者に新聞や雑誌が誌紙面を提供すべきではあるまい。何か言うなら批判に答えてからにしてほしいものだ。

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 「読売新聞」では佐伯順子登場、どうやら同志社のチャペルらしきものを背景に、「与謝野晶子の言説には問題があるけど、死ぬまで鉄幹とラブラブだったというのに憧れが」って、今年48になる女のせりふか。「少女漫画世代なので」って、漫画なんか碌に読んでなかったくせに。記者・待田晋哉なる者も「ホットミルクに口をつけた」とか、萌えてる? しかも『遊女の文化史』を名著だと。本来なら怨霊となって化けて出るところだが、おもしれえ待田、いつでも喧嘩は買うぜ!