オオカミ少女はいなかった

 そういうタイトルの本が出ていた。その他、サピアーウォーフの仮説はもう否定されているとか、心理学関係の、学問的には否定されているのにくり返し出てくる説を並べたものである。
 それにつけても、小倉千加子の『セックス神話解体新書』は、狼少年は出てくるし、ジョン・マネーのインチキ実験は出てくるし、嘘だらけの本なのだから、絶版にしたらどうか。点字図書にまでなっているのだから恐ろしい。だいたいこの本、オオカミに育てられた少年はオナニーをしなかった、言語を習得しないとオナニーをしない、という呆れたことが書いてある。チンパンジーだってオナニーをするのに。いやそれどころか、他の野生児ではオナニーに耽りすぎて困った事例だってあるのに。
 論文捏造とか遺跡捏造は問題になるのに、心理学のインチキは全然問題にならないというあたりも、心理学のダメさだなあ。(通俗心理学は心理学ではないということをもっと声を大にして言わない本物の心理学者も責任があると思う)
 WPで香山リカが「本名・非公開」になっているが、立教大学教授が本名非公開なんて、ありえるのか。Ciniiで香山の本名で検索したら論文が二本出てきて、片方は被引用されていたので、おお中塚尚子の論文を引用するやつがいるのかと思って、見たら、もう一つの自分で引用していた・・・。自分で引用してもサイテーションになるのか。佐伯さんも昔は注にずらずらと自分のエッセイが載っていたっけ。

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佐藤優が「外務省に告ぐ」なんて連載を始めたので、おや佐藤は外務省を辞めたのかな、と思ったら、肩書は相変わらず「起訴休職外務事務官」。じゃあ外務省の職員ではないか。外務省の職員が「外務省に告ぐ」ことなんかできない。幕末期の勝海舟が「徳川幕府に告ぐ」なんてやっているようなものだ。
 佐藤は法律の勉強が足りないね。いかに起訴されていても敵対していようとも、外務省職員であることに変りはなく、私や小林よしのりを合理的理由なく罵って返事もしないのは、国家による国民への不法行為言論弾圧なのである。小林氏はよろしく外務省に抗議の内容証明を送り、佐藤の不法行為について責任を問うべきである。

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『日本の歴代権力者』で山本権兵衛の読みを「ごんひょうえ」としたが、これは「ごんびょうえ」の間違いでした。
 「朝日新聞」2005年10月29日「be 愛の旅人」で『海は甦える』が紹介された中に、こうある。「山本権兵衛の名前はどう発音するのか。/「ごんべえ」「ごんのひょうえ」……、諸説あるが、正解は「ごんびょうえ」。海相、2度の首相を歴任して、諸外国から数々の勲章を贈られた。勲記には、そう表記されている。」
 (小谷野敦