二月五日受理の訴状で株式会社はてなに対し、情報開示および損害賠償請求の訴を起こし、裁判所の和解勧告に従って七月三日、和解が成立、情報開示を受けた。
一昨年、マサシによる罵詈雑言を受けた後、私は当該箇所をプリントアウトして高井戸警察に行った。しかし、警官は、いちおう記録しておく、と言いつつ、これは、いたずらでしょう、と言ってとりあげなかった。さらに頑張るつもりなら、警視庁か検察庁へ行けば良かったのかもしれないが、それはしなかった。瀬々敦子さんは、喫煙を注意した学生から中傷をネット上に書かれて、東京の某警察署へ行ったらすぐ調べてくれたそうで、なぜ対応が違うのか疑問だ。女だからセクハラだとでも判断したのか、法学者だからか。
むろん、はてなに対して削除および情報開示請求をメールでしたが、どうやらこれはいずれもする気はないらしいと思って、やめた。
昨年の初夏、民事訴訟の訴状を作って、もう裁判所へ出かけるばかりになっていた時に、マサシのミクシィ日記を読み、両親からひどい目に遭っているのを知った。それがちょうど、私に罵詈雑言を投げつけている時期だった。私は同情心に駆られて、裁判所へ行くのをやめた。
昨年十月、荻上チキの件ではてなからメールが来た。マサシに関しては、私の名前を伝えてもいいかという問いに対して返事をしないままになっていたから、ここで改めて、伝えてもいい、と返事をした。はてなは12月末にメールをよこしたきり、マサシに削除要請をする様子もなかった。そこで1月末頃メールを送り、対応しないなら提訴する、と伝えた。それでも返事はなかった。
それで東京地裁へ行った。訴額や訴状の補充などで時間をとったから、はてなへ訴状が届いたのは月末あたりだろう。それで3月5日になってマサシに削除要請をした。訴えなければ動かないのだ。(だから私が「訴訟をちらつかせて削除させた」などと書いてあるのは、この件に関しては間違い)
私はマサシに対して憎悪の念があまり沸かない。むしろ、単に自分らの儲けのために、匿名ブログの隆盛のために軽佻な言辞を弄する梅田輩や佐々木輩のほうが憎い。
マサシについて説明する。私は、罵詈雑言そのものは、不快ではあるが、それが最大の不快ではない。一昨年、私はマサシが宮下の言うことを鵜呑みにしているのに対して、「『江戸幻想批判』を読んでくれ」とコメント欄に書いた。いやもっと乱暴な言葉遣いだったかもしれない。マサシはそれに対して「そんなに印税が欲しいのか」と憎まれ口を返し、あとで両方とも削除した。その後、ミクシィのコメント欄に書き込めばアクセスブロックされたし、メッセージを送っても返事はなかった。私はこういう、対話を拒否する姿勢が許せなかったのである。自身の罵詈雑言は頑なに削除を拒絶しておいて、私が対話を試みた痕跡だけは削除する、その根性が許せなかった。
ところで裁判の件が漏れた翌日が公判の日だったが、傍聴していた人が、終了後話しかけてきて、自分もはてなに情報開示の本人訴訟を起こすつもりだと言っていた。まあ、訴状の書き方などというのはネット上にいくらでも転がっているし、裁判所に電話して訊けば、信じられないくらい丁寧に教えてくれる(国民の権利だからである)。費用は郵券(切手)が六千円くらいだが、終って残っていれば還ってくる。今回は四千円ほど戻った。あとは印紙だが、最初は簡裁へ行ったのだが地裁へ回され、訴額不明の場合は百九十万とするから、二万円の印紙を貼る。都合二万二千円で、そう高くはないので、皆さんも躊躇せず提訴しましょう。
もっとも、マサシは最近はおとなしくしているので、すぐ提訴する気はない。ただ願わくは『江戸幻想批判』は図書館ででも借りて、宮下整の言っているのがいかにインチキか、認識してほしいものである。
(小谷野敦)