衛星放送で坂手洋二の「だるまさんがころんだ」の上演を放送していた。鶴屋南北戯曲賞受賞作である。冒頭にはいつものように、林あまりと鈴木裕美による坂手へのインタビューがあった。林さんには四、五年前に一度だけ会ったことがあるが、だんだん綺麗になっている気がする。鈴木といえば自転車キンクリートだが、飯島早苗はどうしているのか、私はちょっと飯島が好きだったので気になって調べたら今も脚本家であるらしい。『法王庁の避妊法』は岸田戯曲賞をとるべきだったと思う。かつて一世を風靡した演劇人のその後というのは気になる。如月小春や岸田理生は若くして死に、北村想は廃業し、後はまあ何とかやっていたり、大学教授になったりしている。何しろシェイクスピアもチェーホフも碌に読んでおらず、今まででいちばん感動した舞台が「ディズニーのアイスダンス」というような奴が(宮沢章夫による)演劇をやりたいとかいって大学へ入ってくるから、まあ、日本ジャーナリスト専門学校を出てもジャーナリストにはなれないとか、そういうことだ。
坂手といえば、『天皇と接吻』である。しかしマスコミは時おり、『天皇と接吻』を隠蔽して坂手を紹介する。このインタビューでも鈴木が、坂手は社会派と言われているという話の中で「ゴミの問題とか、ひきこもり、戦争とか、沖縄とか」などと言うのだが、「天皇制とか」とは言わないのである。『だるまさんがころんだ』でも、皇居にアルカーイダが地雷を仕掛けて、皇族らは那須の御用邸へ避難したとかいう話柄も入っているのだが、『天皇と接吻』を隠すためか、この割に長いインタビューの中で、坂手のこれまでの戯曲の名は口にされることがなく、インポーズで流れた坂手の紹介文でも、受賞歴はあっても、戯曲名だけはきれいに取り除かれていた。このインタビューは、扇田昭彦が司会をしていた頃から、会話に出てきた固有名を字幕で現すのだが、会話に出てこないから、当然そこでも、ない。そういう意味で、本編『だるまさんがころんだ』よりも、「天皇」の語は決して現れないこのインタビューのほうがよっぽど「怖かった」。