学長とウルトラマン

 井上章一さんの『ハゲとビキニとサンバの国』(新潮新書)はブラジル紀行である。中で、リオ州立大学の学長が、井上さんが歌う「ウルトラマンの歌」に涙を流すところがある。『かまくら春秋』五月号では、ここがもっと詳しく描かれている。学長は1960年ころの生まれだろう。ブラジルのテレビでも、日本の特撮が放送されていた。吹き替えだったが、歌だけは吹き替えられていなかったという。そこで井上さんが歌って「手にしたカプセル ピカリと光り」とやり、通訳が訳すと、初めて歌詞の意味を知った学長が感涙にむせんだというのだ。