サザエさん症候群

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 確かに、日曜の夜だから、「あー明日も学校だー」という気持ちになるという説明は分かるのだが、私の世代なら「八時だヨ!全員集合」のエンディングの「いい湯だな」でカトちゃんが「宿題やったか」などと呼びかけるのもそれに当たるのだろう。「日立の樹」はここであげられている中では、ひときわ寂しい。
 だが、その中で、七時に終わる「サザエさん」のエンディングが特に寂しいというのは、やはりこの歌自体に理由があるのではないか。メロディーのほうは分析しかねるので、歌詞だけすると、

 大きな空を眺めたら 白い雲が飛んでいた
 今日は楽しい〜〜ハイキング

 ここまで、サザエさんは出てこないで、このあと妙に長い間奏が入る。「楽しいハイキング」と言われて、学童は、必ずしも楽しいことばかりではない学校の遠足などを思い出して、違和感を感じる。そして、

 ホラホラみんなの声がする

 まだ「サザエさん」は出てこない。ここで学童は、「みんな」というあいまいな表現で、いじめっ子とかを含めた同級生を思い出す。そして前の節とあいまって、別にみなが仲がいいわけではないのに、級友だから仲がいいはずだという価値観を押し付けようとする担任の意識を思い出す。

 サザエさんサザエさんサザエさんは、愉快だな。

 バックのアニメからすれば、ハイキングに行っているのはサザエさん一家である。だがこの一節は、ハイキングを楽しんでいるサザエさん一家に焦点を当てるのではなく、いきなり無人称的に、サザエさんは愉快だという。これはオープニングの「愉快なサザエさん」に対応しているようで、『サザエさん』という番組を指しているようでもある。ここに、「自画自賛」が感じられたら、学童は、校長先生や担任が、わが校を礼賛したり、クラスを礼賛したりする欺瞞的な口調を思い出す。あるいは、「愉快だな」の一言で、実はいろいろあるごたごたをごまかしてしまおうという大人的意図を察知するのである。