昼間図書館で、テーブルと書棚の間の狭いところで、十歳くらいの男の子がメモを見ながら考え込んでいた。私はそこを通ろうとして、身ぶりでどくよう示したのだが、男の子は、こちらへ体を向けたままあとずさる。横へはけてくれればいいのに、まっすぐ後ろへ下がるから、まるで私が襲いかかろうとしているみたいになってしまった。
映画やテレビで、自動車が殺意を持って追ってくる時とか、主人公たちはわきへよけないで、どういうわけかまっすぐ逃げる。もちろん、脇へ逃げようとするのに巧みに追ってくるということもあるが、しばしば、なんでまっすぐ逃げるのだ、と思うことがある。それを思い出した。