「鰍沢」成立の謎

 「鰍沢」が河竹黙阿弥作ではないかという説であるが、小島(おじま)佐江子「『鰍沢』成立考-円朝と黙阿弥」(『語文』日本大学、1997年)を入手した。
 「鰍沢二席目」という続編があってこれが黙阿弥作とも言われている。さて小島が持ち出したのは「鰍沢」に出てくる「釜ヶ淵」という地名で、これは現実の鰍沢あたりにはない。しかるに天保期、黙阿弥が身延山へ旅をした時の日記にこの地名が出てくる、というのがカギである。そこから、「二席目」のみならず「鰍沢」も黙阿弥作ではないか、というのだが、やはり定説とするには決め手に欠ける気がする。
 なお「天竺徳兵衛韓噺」は徳川時代から「はらいそ〜〜」があった旨、確認した。