井上健さんの『文豪の翻訳力』は、もうずっと前に出た丸善ライブラリーの『作家が訳した世界の文学』を増補したものである。しかし翻訳では近ごろ騒動を起こした出版社から出ているけれど、中身は大丈夫である。
 それはさておき、中西裕『ホームズ翻訳への道 延原謙評伝』(日本古書通信社、2009)を読んでいたら、岸田国士の軽井沢の山荘を設計した今井兼次について、人見絹枝との関係を描いたドラマがあった、とあり、人見は松下由樹だったが今井が誰だったか全然覚えていない、とあった。
 中西氏は1950年生まれだが、これはぜひ「配役宝典」で見てほしかった。これは『紅い稲妻 人見絹枝』(1992年)で、今井は塩谷俊である、とすぐ分かる。もっとも建築に疎い私はその今井なにがしを知らないのであったが。