海外幻想

 小室直樹の死は噂されていたが確認がなかなかとれなかったとあちこちに書いてあるが、副島の言うことでは信用できないということか。
 『週刊新潮』の訃報記事の最後に、「海外にいたら大学で正当に評価されただろう」(大意)とあったが、これまた海外幻想だな。海外でもテレビで人を蹴飛ばすような奇人は大学からは敬遠されるに決まっている。それに小室を褒める人は、みな、実際に会って、理解力が凄いとか言うのだが、学者というのは論文で評価されるもので、しかし小室に何の業績があるのか、というのはよく分からん。まさか田中角栄が無罪だと言ったとか、ソ連の崩壊を予言したとかいうのは業績ではあるまい。『危機の構造』だけがまあ読むに耐えるが、あれも時論だしね。(訂正:70年代まではちゃんとあった http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20101011
 『週刊文春』では坪内祐三が、角川文庫フォー・ビギナーズの山田有策による『金色夜叉』を褒めつつ最後にちょっと疑念を呈している。しかし山田という人が『たけくらべ』論争の時にどういうひどい態度をとったか、ということは『現代文学論争』に書いておいた。

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「能は死ぬほど退屈だ」の補遺であるが、表章は『岩波講座 能・狂言』第一巻に「能時間の推移」(223p以後)を書いて、室町時代の能の演能時間が現在の60%、徳川時代は80%くらいであったことを示している。http://ci.nii.ac.jp/els/110000208321.pdf?id=ART0000583705&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1286357969&cp= こちらはさらに資料的に詳しい。