市川眞人なるもの

 朝日新聞出版局のPR誌「一冊の本」6月号の冒頭に、島田雅彦ロングインタビューというのが載っている。『快楽急行』という新刊エッセイ集の刊行にあわせたものだ。これは「朝日新聞」beに連載されていて、島田はエロ親父になったとかさんざんに言われていたものである。
(活字化のため削除)
 このインタビューは、高見広春を「俊春」と誤植していたり、担当者の無能がよく分かるものであった。これは「たかみこうしゅん」と音読みされているが、これでは「しゅんしゅん」ではないか。パンダの名前か。
 ところが続けて読んでいくと、金井美恵子のエッセイに、「早稲田文学」編集長の市川真人、と出てくるから、多分そのお方であろう。そしてこれが、笙野頼子のあの支離滅裂反論文を載せた人物と同じだとすると、私はふか〜く納得するのである。何しろ森喜朗が総理になって以来、早稲田はバカ、という意識が私にはどうしてもあって、最近、そういう偏見はいかん、と思いつつあったのを、この市川なるお方が復活させたのである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(活字化のため削除)
 金井美恵子が「プーチン首相」と書いたり、どうもこの雑誌は全体に低能な雰囲気が漂いつつあるが、この号を最後まで読むと、橋本治の連載があって、自分は雑誌原稿なら締め切りと枚数は守るが、単行本では守らない、なぜ単行本で締め切りやら枚数制限があるのか、とあって、単行本の執筆依頼から上梓まで二、三ヶ月というのはとんでもないスピードである、とあり、まったく橋本の言うとおりなので、この雑誌を続けて読むと、ああやっぱり東大卒は頭がいい、外語大や早稲田や東京歯科大とは違う、と思ってしまうではないか。そういう学歴信仰を促進させるための雑誌か、これは。
    (小谷野敦