野生の思考

 レヴィ=ストロースは「現代思想」の中でもまともなほうの学者だが、『野生の思考』はどうもいただけない。あの本は、野生の思考は近代的科学的思考とは違う、と言っているようにも、基本的には同じだ、と言っているようにもとれるのである。トーテミズムそのものであれば、別にレヴィ=ストロースが発見したわけではないから、これはその「意味づけ」の本なのだが、何だか、何も言ってないに等しい、そのくせ、学問的に十分な鍛錬をへていない者が「野生の思考」と口走りたくなる性質を持っていて、だいたい表紙が野生のパンジーだったり、パンセ・ソヴァージュは二つの意味があるとか、受け狙いが激しいのである。 
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