「赤」など

 図書館で『英語青年』を見て、比較文学の先輩に当たる仙北谷晃一氏が昨年亡くなっていたのを知った。一度くらいお姿を見たことがあるはず。
 井上章一『狂気と王権』講談社学術文庫の文庫あとがきを面白く立ち読みした。これを連載していた頃、日文研天皇が来ることになって、京都府警がそれを見て梅原所長に電話してきて「赤じゃないだろうな」と言い、梅原が「彼はピンクでしょう」と答えたという、人によっては本気で怒りそうな、とりようによっては警察の思想調査を皮肉るようなものである。
 しかし、なぜ君主制反対は常に社会主義と結びつくのだろう。それは共和主義というもので、共和主義者に対する「赤」のような蔑称がないのがちと悲しい。「緑」じゃあ環境保護団体か禁煙ファシスト団体のようだし、「青」じゃあ貴種のようだし、「黄色」じゃあ××××のようだが、それでもいいかもしれない。
 茂木健一郎の、編集者から「あまり売れない本を作りましょう」と言われた話は凄いなあ(「ちくま」三月号)。やはり宗教書は強い。もう大正時代から、売れるのは賀川豊彦倉田百三だったものね。