相撲と健康増進法と雪山登山

 まあタイトルを見ただけで中味は分かってしまうのだが、いま九州場所の最中である。健康増進法はその第一条で、国民は健康であるべく努めなければならないと言っているが、相撲は実に健康に悪い。力士は概して短命であり、四十代、五十代で死ぬのも珍しくない。大相撲は健康増進法違反なのである。国技館は桝席を全面禁煙にしたが、そもそも相撲そのものが健康増進法違反なのだから、ちゃんちゃらおかしい。命くらい短くなっても勝負に賭けるのが力士である。それが国技である。もう支離滅裂である。いい加減にしてほしいのである。 

 あと前から気になっているのが、雪山登山する奴らである。イラクの人質事件の時にも「自己責任」の例として話題になったが、もともと危険な行為をわざわざしておいて、遭難したら助けてくれ、というのは図々しい。雪山登山する奴は、「遭難しても救助を要請しない」旨の誓約書を警察に提出して行くべきだ。                    (小谷野敦