2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

石坂洋次郎の正体

二か月ほど前に三浦雅士さんから『石坂洋次郎の逆襲』(講談社)を送ってもらった。私は石坂については『恋愛の昭和史』で論じたこともあるが、『若い人』が不敬罪と軍人誣告罪という、後者にいたっては存在しえない罪で告訴されたというデマのほうが気にな…

「二つの文化」とピンカー

小谷野敦 スティーブン・ピンカーの『21世紀の啓蒙』は、人類がその歴史においていかに進歩してきたか、啓蒙主義を基調として論述し、人類の未来は明るいとしたもので、地球温暖化などは取り組まなければならない危機とされている。その最後のほうでピンカ…

高校時代、どんな本を読んでいましたか

最近、新人の小説を読んでいて、主人公が作者に重ね合わせられる大学生くらいの時に、高校時代どういう本を読んでいたかまるで分からない、ということがある。だがこれは、分からないということが気になる私が特殊なので、普通はそんなことは考えないのだろ…

新刊です

歌舞伎に女優がいた時代 (中公新書ラクレ 680) 作者:小谷野 敦 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 p74「采女が原に小三の三人芝居がありまして」→「古参」 p92頁、政岡の子=千松が、「仙松」と誤 p129「えびすだにざ」→「えびすざ」 p207「寿美次」→「…

神田山裕の思い出

伯山TVを毎日観ていて、神田山裕のことを思い出した。私が中学校一年生の1975年、同級生の川田のお母さんでのち川田工業社長夫人になる人が、毎夏海外からホームステイする大人が来ていて、その夏来ていたアメリカ人男性を案内してはとバスツアーに行くと…

純文学世界の謎

猫猫塾で、これから新人賞に応募しようというような生徒が、どの賞がいいかとか、どこの賞は選考委員がどうとか言うが、そういうことは最終選考に残ってからの話で、最終選考に残るだけでも大変なことだ、ということをまず言わねばならない。 私は下読みをや…

事実に意味があるのである

もう五年くらい前の本だが『文豪の女遍歴』(幻冬舎新書)への感想についての感想を書いておく。 読者はがきの中には「今度は一人の作家を掘り下げてください」などと書いてあるのもあり、参考文献に私の名前をつけて『谷崎潤一郎伝』とか『川端康成伝』とか…