2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

書き続けること

私は尾崎翠批判派なのだが、尾崎が長生きして、死ぬ時に「このまま死ぬなら無残なものだねえ」と言ったという、それはつまり若いうちに文壇から退いてしまったことを示しているのだとしたら、なんで書き続けなかったのかと。尾崎にはもう書くことがなかった…

金井美恵子先生のイヤミ

朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』で私が一番愉しみにしているのは金井美恵子先生の連載エッセイなのだが、このところ金井先生もなんリベ化したか? と思いつつあったが、四月号は面白かった。 今回は赤坂真理と香山リカを揶揄しているのだが、面白かったのは…

新刊のようなもの二点

鴎たちのヴァンクーヴァー 小谷野敦作品集作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 猫猫塾発売日: 2015/03/23メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る谷崎潤一郎対談集 - 文藝編作者: 小谷野敦,細江光出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2015/03/24メディア…

『21世紀ドストエフスキーがやってくる』(集英社、2007)には、大江健三郎と沼野充義の対談「ドストエフスキーが21世紀に残したもの」が載っている。これは収録が2006年10月23日、山の上ホテルにて、となっている。一方『すばる』2007年4月号には、同じ二人…

何の『礼讃』なのか

(14日記)木嶋佳苗の自伝的小説『礼讃』をやっと読了した。以前、獄中で木嶋が書いたという性描写の断片を見て、なかなかの才能だと女性誌でコメントしたのは私だが、実際文章はうまい。猫猫塾で小説指導をしていても、これだけまとまったものを書ける人はな…

Le petit prince

安冨歩(1963年3月- )という東大教授の『誰が星の王子さまを殺したのか モラル・ハラスメントの罠』(明石書店)を読んで、困っている。これは困る本である。 モラル・ハラスメントというのは、私はてっきり、大人の世界のいじめの言い換え語だと思っていた…

(活字化のため削除) - こないだ野間易通に「自分がイデオロギー・フリーだとでも思っているのか」と言われたが、イデオロギー・フリーというのはドイツ語と英語が混じっているから「アイデアラジー・フリー」になるのか、まあそんなことはどうでもいい。 …

経済合理性

中川右介氏の『講書術』に、新刊として出ている本は古書では買わない、とある。マケプレやブックオフなどで買わないということである。出版人としての仁義みたいなものか。 私は貧乏人なのでもちろんなるべく安いのを買う。ブックオフで値段を見て、これなら…

盗作

須藤鐘一というあまり知られない作家が明治45年に出した『手紙小説 宮と貫一』というのがある。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/888340 しかしこれ、題名からも分かるとおり『金色夜叉』の書き直しである。『金色夜叉』は明治36年、尾崎紅葉の死によっ…

ある種の新刊

グンはバスでウプサラへ行く 小谷野敦作品集作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 猫猫塾発売日: 2015/01/26メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る