古谷田奈月へ

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古谷田 

 そうなんです。生きていけないんです。今回、元号が変わるとなったときに感じたことですが、私の周囲に多くいるリベラルな人たちは基本的に天皇制に反対で、元号が変わるからなんなの、昭和だの平成だのっていう時間の捉え方は意味ないから西暦だけでいいというスタンスでした。その考えは本当によくわかるんだけど、今回この作品を書きながら色々と調べているうちに、そうではない時間の中に生きている人たちも大勢いるんだと実感しました。それはたとえば明治一五〇年とか言いたがる人がいるとかそういうことではなく、皇室という存在を身近に感じて生きている人がいるということ。天皇制は人権問題で元号は無意味、そう割り切れるのはたまたまそういう価値観でいられる環境に生まれたからにすぎない。天皇という存在が必要な人、元号という時間の区切りを大切にしている人というのは実際にいるし、そういう人は自分が特別な思想を持っているなんて思ってない、ごく自然にそうなんです。長く続いてきたものの中にはそこに関わってきた人たちの日常と、それからもちろん心が残っているのに、そういうところに配慮しながら制度批判できているのか疑問です。本当に変化が必要だと思うのなら、自分と異なる環境に生まれ、異なる価値観を持っている人を尊重した言動で議論してほしいし、相手にとって「ある」ものを「ない」と切り捨てるのはやめてほしい。自分が正しいと信じ込んで極端な物言いになるのは、右派にも左派にも共通する問題だと思います。

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 古谷田奈月という人は、そのうち楯の会でも結成するんじゃないかという感じがするのだが、なんでこう圧迫的な物言いをするのであろうか。それなら右翼知識人が、「身分制度だがいいのか」とか「戦後生まれなのになんで天皇好きなのか」とかを説明してくれればいいのである。

小谷野敦