「魔王」の子供は病気か

 ゲーテの詩にシューベルトが曲をつけた「魔王」は、学校の音楽の時間に教わるのでよく知られている。荒義剛(1920年- 、いわき短期大学教授)の『魔王異聞』(批評社、1992)には、この曲が、子供が熱病で死んだという通説に出会って著者が驚くというエッセイが表題作になっている。
 私も、これは子供が病気で医者へ連れて行く途中だと思っていたが、そうではないらしい。荒は、シューベルトの訳詞で戦前から知られるO女史なる人がこれを「病める子供」と訳していた、と紹介している。ところが調べてみるとこれは緒園涼子という人で私は知らなかったが「りょうし」と読んで実は男であるらしい。