東大でホラー映画

 先週から、東大での授業中に、やや困った現象が起きている。廊下の斜め向いの教室から、「ぎぁ〜」というような声が聞こえてくるのだ。どうやら映画を観せているらしいが、あまり音が大きいので、学生もくすくす笑う。先週は出向いて行ったら、暑いのにカーテンを引いて部屋を真っ暗にして、どうやらホラー映画をやっているらしい。私はドアを開けて、教員の注意を引き、手まねで、音量を下げてくれと頼み、少し小さくなった。
 それが、翌週も、「ぎぁ〜」である。音量は依然として大きい。面倒なので今日は放っておいたが、どうやら英語の授業で、ホラー小説を読んでいるらしい。まあ、学生はそれと知って来ているのだろうし、今の若い子はむやみとホラーが好きだから、いいのだろう。しかしもうちょっと、音量下げてほしいのである。どこかの専任の人なら、部会に苦情を言うのだが、非常勤をかけもちしている人のようなので、やめておいた。
 (小谷野敦