妻に教えられて知ったのだが、マンディアルグの『薔薇の葬儀』には、イヨ、アオイ、ダイニ、イヌキという四人の日本人遊女が出てくる。94年にこれを訳した田中義廣は、イヨとアオイはともかく、ダイニとイヌキという名前をどこから思いついたか分からない、と訳者あとがきで書いている。『源氏物語』に決まっているのだが、この2012年に死んだフランス文学者は『源氏』を読んだことがなかったのだろう。それにしても高校の古文で「いぬきが逃がしつる」は教わると思うのだが。

薔薇の葬儀 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

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