阪大にいた時、ヨコタ村上孝之が、田中角栄が「お食事券でございます」と言われたという小拙を聞いてゲラゲラ笑っていた。私はそれは前に聞いていて、ハハハくらいには笑ったが、ヨコタ村上の笑い方は激しく、「同じアクセントなんだよね」と言いながらゲラゲラ笑い続け、私はちょっと異常なものを感じた。
三島由紀夫が折に触れて「馬鹿笑い」をしたというのはよく知られているが、ヨコタのそれも三島のそれに近かった気がする。三島の場合は、自分が普通の人間であることをアピールするためではなかったかと思っているが、ヨコタの場合、それとは違う感じがした。ヨコタは、笑いたいという気持ちが強い人間だったと思う。それがどういう意味なのかは、まだ分からない。
(小谷野敦)