星5つ - 評価者: 小谷野敦、2025年4月12日
作者の訃報に接したので、1976年田村俊子賞受賞のこの短編集を読んでみた。1968年『農民文学』に発表した「春の終り」は農民文学賞を受賞しており、その後「ある屈折」「地下足袋」「奪う者」「焼く」「黄の花」と、同人誌『だん』に発表し、68年私家版短編集として出したのが田村俊子賞をとり、76年に創樹社から新版として出たものだ。長野県佐久地方の農村を舞台に、「黄の花」は戦争中の、ほかは戦後の農地解放後の農村の若者の苦しみなどを描いているが、嫁姑の争いを描いたものがなく、新しい世代の農民文学だったことを感じさせる。
