山下武「大正テレビ寄席の芸人たち」アマゾンレビュー

なかなかキビシイ
星3つ - 評価者: 小谷野敦、2023/01/30
著者はすでに故人だが、柳家金語楼の長男でテレビプロデューサー、椎名麟三に師事した文芸評論
家、私はこの人の長男と高校一年の時同じクラスだった。手がけた番組「大正テレビ寄席」は日曜の
お昼にやっていたのを父が観ていた。牧伸二が司会をするあれだが、下品な番組というイメージがあ
った。本書はこれに出演した数々のお笑い芸人について書いている。ポール牧とかビートたけしには
けっこう厳しいことも書いている。芸人が、客に拍手を求めるというのは絶対やってはいけないこ
と、と書いてあるが、私はテレビで、後年の牧伸二とか、これをやってしまったのを見ている。最後
のほう、東京ぼん太とトニー谷に対してはかなりきついことを書いているが、あとがきでは、伝聞で
トニー谷の評伝を一冊ものした者がいると書いているのは村松友視のことだろうが、これには直木賞
作家への嫉妬もあるか。やや後味が悪いが資料的価値はある。