平山瑞穂「エンタメ作家の失敗学」アマゾンレビュー

本書には著者が手がけてきた小説の内容がかなり詳細に紹介されているのだが、読めば読むほど、
(売れないだろうなー
と思わせる。特に「僕の心の埋まらない空洞」に関しては、どうして編集者がOKを出したのか理解に苦しむくらいである。「バタフライ」に関して著者は、映画「バタフライ・エフェクト」を知らなかったのが失敗だと言っているが、貫井徳郎の推理作家協会賞受賞作「乱反射」を知らないことのほうが問題ではないか。
あと純文学は売れなくても出してもらえるみたいなことが前のほうに書かれているがとんでもない。文藝誌に載ってもその出版社から出してもらえないのが現状である。あと編集者が、メールを出しても返事をよこさないのを「非礼」と書いているが、純文学の世界では日常茶飯事である。著者は純文学志向だと言いつつ私小説を書きたがらないようだが、平山蘆江の曽孫として、平山清郎、平山城児、川端康成の代作をした祖母・近江ひさ子、芥川賞候補になった母・加藤浩子の平山家四代の話をぜひ書いてほしい。